本当は怖い愛とロマンス
その後、雑誌の取材の為にスタジオに戻った俺は、女性記者に投げかけられる質問に応えていた。
その横には、インタビューに答える俺の表情にシャッターを切るカメラマンの男が角度を変えながら、何枚も写真を撮っていた。
すると、女性記者が、明らかに今までとは、違う声のトーンで質問を切り出す。
「本木さんの作る音楽の歌詞は恋愛の事を書いてる事が多いですが、歌詞の中で描かれている女性は、やっぱり、本木さんの身近にいる女性をモデルにしてるんですか?」
女性記者が、不敵な笑みを浮かべて、右手に持ったペンをスタンバイして、俺の言葉を待っていた。
腕を組んで、椅子にもたれかかり、目を瞑りながら考えた素振りをしていると、横にいた中田が、俺の代わりに答えを出した。
「すいません。本木は、そういうプライベートな質問にはちょっとNGなんですよ。」
「えっ?一応、取材のテーマは事前にお話ししましたよね?私共が、今回、本木さんの特集を組む上で、普段一切公開されていないプライベートな部分を重点に置いてインタビューさせて頂きたいって。話が違うじゃないですか。」
負けじと女性記者が、怒った表情で中田に噛みついた。
「そんな説明は受けておりません。とにかく、そういう事なら、このお話はなかった事に。お引きとりください。」
「ちょっと、中田さん…!」
中田は、悪魔でも、強気な姿勢で、怒って感情をあらわにする女性記者と写真をとるカメラマンをスタジオのドアを開け、追い返した。
二人が帰っていくのを確認すると、俺は、中田を呼びつけ、軽く頭を小突いた。
「おい!連絡ミスで、お前の方が悪いんだろ?なんだよ?あの態度は。別にあれくらいの質問大丈夫だろうよ。」
「あのね、音楽に関係する質問だからって、答えたら、本木さん終わりですよ。調子に乗って、ある事ない事かかれるのがオチなんですから。ただでさえ、今まで、捨ててきたた女性の恨みかって、何回も週刊誌にネタ売られて、世間の女性関係のイメージだけはかなり悪いじゃないですか?それに、ファンに個人情報やプライベート知られて、トラブル避けたいって、社長に直訴したの本木さんですよ。それで、プライベート話すのNGになったでしょ?本木さんの口から、自分でミュージシャン生命終わらせる気ですか?ああやって、追い返す以外方法ないでしょ?」
「逆に、次のCDの話題作りになるんじゃないか?」
俺は、冗談っぽく笑ってそういった。
「冗談やめてくださいよ。僕の寿命縮める気ですか?とにかく、しばらくは、来年に発売する予定の新曲の曲作りに専念するとかしてくださいよ。三か月後には全国ツアーだって、控えてるんですから。僕は、社長に報告してから、雑誌社に謝りの電話いれてきます。」
「はいはい!わかったよ。お前は、何にも冗談も通じない面白くない奴だって、よく解ったからさ!ついでに、コーヒー入れてきてくれよ。」
「全く…わかりましたよ。本当に、頼みますよ。」
中田が、腕につけていた時計をみながら、スタジオのドアを開けて、出て行くと、俺は、後ろに立てかけていたギターに手を伸ばす。
1人になると、瞼を閉じながら、適当なコードで、ギターの弦を弾く。
それが俺のいつもの指鳴らしというものだ。
ギターを弾きながら、昼間の死んだ渚と同じ名前の女の最後の顔を思い出し、俺は、手を止めた。
渚を失って以来、初めてだった。
俺が、一人の女の事を思い出したり、考える事など一度もなかったからだ。
やっぱり、渚に顔が似ているからだろうか…と思った。
さっき、雑誌の記者にも質問されたが、最近書いていた恋愛の歌詞の言葉に、随分、長い間、今の現実世界にはイメージやモデルなんていない。
全てが、渚と歩むはずだった未来を俺が勝手に想像しただけだ。
渚が、もし、今の俺と一緒にいたならと仮定してから、ストーリーを考えて、こういう恋愛をしていただろうという妄想をする。
それは、願望であり、決して叶える事なんて出来ない、俺以外は壊す事なんてできない綺麗な夢物語だ。
きっと、誰もが一度はしてみたいと思うような理想的な幸せな恋愛ストーリー。
現実では、決して実現する事が出来なかった俺の空想の世界を、全部歌詞の中に詰め込んできた。
でも、目の前にいたあの渚に似た女は空想ではなく、現実だ。
近くにあったペンを見つめると、俺は、ギターを元の場所に戻し、何かに取り憑かれたみたいにペンを握る。
頭に浮かんだフレーズや気持ちを紙に殴り書きして書き出し、良い言葉を抜き出し組み合わせ、仮の歌詞を作っていた。
その時は、普段、浮かぶはずの生きていた頃に見た渚の姿はなく、何度も昼間あった渚に似た女の姿が頭には浮かんでいた。
順調に歌詞を組み合わせながら書いていると、コーヒーを片手に持った中田がスタジオに戻ってくる。
「本木さん、コーヒー淹れてきましたよ。どうしたんですか?紙にメモなんか書き始めて…」
上から書いている紙を覗き込むと、大きな声を上げた。
「本木さん!久しぶりにきましたね!なんですか?この歌詞、ヤバすぎますよ!新曲の歌詞ですか?」
俺は、書いていた手を留めると、下から中田の顔を睨みつけた。
中田は、いつも、タイミング悪く俺の邪魔をする。
それが、わざとなのか、自然にやっているのかは、俺にも解らない。
「お前は、いつも、騒がしい奴だな!あーあ、手止まっちゃったよ。ささっと、コーヒーよこせ!」
俺は、立っていた中田の手からコーヒーを乱暴に奪うと、テーブルの上にペンを置いて、口に運んだ。
その間に、中田は、書いていた紙を手に取ると、無言で歌詞を読み始めた。
その横には、インタビューに答える俺の表情にシャッターを切るカメラマンの男が角度を変えながら、何枚も写真を撮っていた。
すると、女性記者が、明らかに今までとは、違う声のトーンで質問を切り出す。
「本木さんの作る音楽の歌詞は恋愛の事を書いてる事が多いですが、歌詞の中で描かれている女性は、やっぱり、本木さんの身近にいる女性をモデルにしてるんですか?」
女性記者が、不敵な笑みを浮かべて、右手に持ったペンをスタンバイして、俺の言葉を待っていた。
腕を組んで、椅子にもたれかかり、目を瞑りながら考えた素振りをしていると、横にいた中田が、俺の代わりに答えを出した。
「すいません。本木は、そういうプライベートな質問にはちょっとNGなんですよ。」
「えっ?一応、取材のテーマは事前にお話ししましたよね?私共が、今回、本木さんの特集を組む上で、普段一切公開されていないプライベートな部分を重点に置いてインタビューさせて頂きたいって。話が違うじゃないですか。」
負けじと女性記者が、怒った表情で中田に噛みついた。
「そんな説明は受けておりません。とにかく、そういう事なら、このお話はなかった事に。お引きとりください。」
「ちょっと、中田さん…!」
中田は、悪魔でも、強気な姿勢で、怒って感情をあらわにする女性記者と写真をとるカメラマンをスタジオのドアを開け、追い返した。
二人が帰っていくのを確認すると、俺は、中田を呼びつけ、軽く頭を小突いた。
「おい!連絡ミスで、お前の方が悪いんだろ?なんだよ?あの態度は。別にあれくらいの質問大丈夫だろうよ。」
「あのね、音楽に関係する質問だからって、答えたら、本木さん終わりですよ。調子に乗って、ある事ない事かかれるのがオチなんですから。ただでさえ、今まで、捨ててきたた女性の恨みかって、何回も週刊誌にネタ売られて、世間の女性関係のイメージだけはかなり悪いじゃないですか?それに、ファンに個人情報やプライベート知られて、トラブル避けたいって、社長に直訴したの本木さんですよ。それで、プライベート話すのNGになったでしょ?本木さんの口から、自分でミュージシャン生命終わらせる気ですか?ああやって、追い返す以外方法ないでしょ?」
「逆に、次のCDの話題作りになるんじゃないか?」
俺は、冗談っぽく笑ってそういった。
「冗談やめてくださいよ。僕の寿命縮める気ですか?とにかく、しばらくは、来年に発売する予定の新曲の曲作りに専念するとかしてくださいよ。三か月後には全国ツアーだって、控えてるんですから。僕は、社長に報告してから、雑誌社に謝りの電話いれてきます。」
「はいはい!わかったよ。お前は、何にも冗談も通じない面白くない奴だって、よく解ったからさ!ついでに、コーヒー入れてきてくれよ。」
「全く…わかりましたよ。本当に、頼みますよ。」
中田が、腕につけていた時計をみながら、スタジオのドアを開けて、出て行くと、俺は、後ろに立てかけていたギターに手を伸ばす。
1人になると、瞼を閉じながら、適当なコードで、ギターの弦を弾く。
それが俺のいつもの指鳴らしというものだ。
ギターを弾きながら、昼間の死んだ渚と同じ名前の女の最後の顔を思い出し、俺は、手を止めた。
渚を失って以来、初めてだった。
俺が、一人の女の事を思い出したり、考える事など一度もなかったからだ。
やっぱり、渚に顔が似ているからだろうか…と思った。
さっき、雑誌の記者にも質問されたが、最近書いていた恋愛の歌詞の言葉に、随分、長い間、今の現実世界にはイメージやモデルなんていない。
全てが、渚と歩むはずだった未来を俺が勝手に想像しただけだ。
渚が、もし、今の俺と一緒にいたならと仮定してから、ストーリーを考えて、こういう恋愛をしていただろうという妄想をする。
それは、願望であり、決して叶える事なんて出来ない、俺以外は壊す事なんてできない綺麗な夢物語だ。
きっと、誰もが一度はしてみたいと思うような理想的な幸せな恋愛ストーリー。
現実では、決して実現する事が出来なかった俺の空想の世界を、全部歌詞の中に詰め込んできた。
でも、目の前にいたあの渚に似た女は空想ではなく、現実だ。
近くにあったペンを見つめると、俺は、ギターを元の場所に戻し、何かに取り憑かれたみたいにペンを握る。
頭に浮かんだフレーズや気持ちを紙に殴り書きして書き出し、良い言葉を抜き出し組み合わせ、仮の歌詞を作っていた。
その時は、普段、浮かぶはずの生きていた頃に見た渚の姿はなく、何度も昼間あった渚に似た女の姿が頭には浮かんでいた。
順調に歌詞を組み合わせながら書いていると、コーヒーを片手に持った中田がスタジオに戻ってくる。
「本木さん、コーヒー淹れてきましたよ。どうしたんですか?紙にメモなんか書き始めて…」
上から書いている紙を覗き込むと、大きな声を上げた。
「本木さん!久しぶりにきましたね!なんですか?この歌詞、ヤバすぎますよ!新曲の歌詞ですか?」
俺は、書いていた手を留めると、下から中田の顔を睨みつけた。
中田は、いつも、タイミング悪く俺の邪魔をする。
それが、わざとなのか、自然にやっているのかは、俺にも解らない。
「お前は、いつも、騒がしい奴だな!あーあ、手止まっちゃったよ。ささっと、コーヒーよこせ!」
俺は、立っていた中田の手からコーヒーを乱暴に奪うと、テーブルの上にペンを置いて、口に運んだ。
その間に、中田は、書いていた紙を手に取ると、無言で歌詞を読み始めた。