彼と私の問題点を考える
元々仕事のあとに会う約束をしていた。


すっかり忘れて家に帰ってしまった私の事を幸い目の前にいる彼は知らない。


仕事から帰ってきたままの服装でカフェにいる私を彼は疑いもせずにジッと見つめて「珍しいな」と一言呟く。


それが飲み終わったミルクティーを指していることに気が付いて、返事の代わりに小さく頷いて空になったグラスをテーブルの端に寄せた。


確かこの前会ったのがちょうど1週間前。


髪型が少し変わった、と思う。


セットの仕方にもよるんだろうけど、まず色が違う。


この前より少しだけ明るい色になった気がする。


私の記憶が曖昧なのもそれが短い間隔で結構変わるからだと思う。


そんなの、ただのいい訳なんだろうけど。


「仕事が思ったより長引いて、今日連絡できなくてごめん」


お冷を持って現れた店員に、彼はアイスココアを頼むと謝罪した私を一瞥して「いや」と首を横に振った。

 
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