神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました



「…部屋に入るけど大丈夫?」



やっと目的の部屋に来たらしく 今まで無言で詩織の前を歩いていた藤堂が振り向きながら言う。



ごくりと唾をのんだ詩織。


いよいよ緊張が高まる。


遂に幹部と顔を合わせなければいけないのだろう。



「はい」



少し声が震えてしまったがしっかりと返事をする。



藤堂が先に部屋に入る。



「局長、藤堂です。
目覚めたようなので彼女を連れてきました」


「入りなさい」



野太い男の声が部屋の中からした。



藤堂が詩織を見て頷く。


部屋に入る許可が出た。



「失礼します」



静かな部屋に詩織の小さなその声が響いた。




が、詩織の目の前にいた人物がいけなかった。



「…プッ……」



四角く えらの張った顎が特徴的な顔。



何とか俯き 笑いをこらえた詩織。



しかしその詩織の努力を踏みにじるようにその男が話し出す。



「まぁ立っているままのもなんだ。
座りなさい」


「はい。
お言葉に甘えてありが…ックク…とう……ございます」



人の顔を見て笑うことは失礼だと頭では分かっているのだが...いかんせん面白いものは面白いのだから仕方がない。



なるべく男の顔を直視しないように注意しながら座る。



だが 思わず目に飛び込んできた彼の顔に耐え切れず



「…アッハハハハッハハハ」



大笑いしてしまった。



一斉にその部屋に居た者の視線が詩織に集まる。


皆 唖然とした顔で詩織を見た。



「おいっ!
お前…」


「いや…様子を見よう」



熱(イキ)り立った端正な顔をした別の男を彼は手で押さえた。


渋々と端正な男は彼の隣に座りなおす。








けれども



「…いつまで笑ってんだ?」



どれだけ待っても笑いやまない詩織にしびれを切らした男が怒りで 声を低く震わせて言った。



彼は怒る男をなだめながら困ったように笑い 呟く。



「しかしいつまで笑っているのも困ったものだな」



そこでニコッと詩織に微笑み



「君は一体何者かな?」



普通に尋ねた。



けれども皮肉なことにその行動が余計に詩織を爆笑させる。




ハァ…と小さく彼はため息をつく。



「いったいどうすればいいのかね…」



額に手を当ててうなだれた。




『困らせるなよ…』という無言の圧力 プラス シラーッとした白けた視線が詩織に集中する。




その視線に気づき 笑いすぎてこぼれた涙を拭きながら詩織はやっと笑い止んだ。



「あのですねぇ…まず最初に言っておきますが…フフッやっぱ無理……アハハッ」



と、思ったが また笑いが ぶり返したようだ。


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