神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました
数分だろうか。
部屋に居た者すべてが詩織が笑い止むのを待った。
詩織も笑い止み さっきより落ち着いたようだ。
あくまで“さっきより”だが…
だからだろう
「最初に、私は別に近藤さんの顔を見て笑った訳じゃ…ぁ」
余計なことを口走った。
「…ほぅ」
それまでまじろぎもせず詩織を見ていた端正な顔の男―土方歳三―が目を糸よりも細くし詩織を射る。
そして藤堂に視線が集まった。
当の藤堂はこれでもかと思うほど大げさに首を振る。
自分が近藤さんの名前を教えたと思われるのは心外だったみたいだ。
また どうしてこんなにも冷酷な声出せるのかと思うほど背筋が冷たくなるような声を土方は出した。
「何故おめぇは近藤さんの名を知っている」
「…アハハ……なぜ…ですかね?」
「よしっ こいつは間者だ。
拷問し ───」
「ごめんなさい。全てを話します」
こんなことで拷問なんてたまったものじゃない。
しかし信用されるような話を詩織は何も持っていないのだが。
本当に仕方がないので今伝えても大丈夫そうな事実のみを話すことにする。
「あの…私がこれから言うことは全て事実ですからね…?」
取り敢えず前置きして ───
自分の名前は宮野詩織ということ。
この時代の人間ではないこと。
つまり150年ほど先からの時代から来たということ。
このままだと自分がいた時代には戻れないこと。
自称 神様が自分をこの時代のこの場所に連れてきたこと。
(嘘だけど)ただし、壬生浪士組の皆さんが辿る歴史は分からないこと。
皆 胡散臭い詩織の話を聞いてくれた。
一通り話し終わった後 ホッと一息ついてまとめる。
「簡単に言うと私は未来から来た…ということなんです」
「って 言われてもなぁ…
『はい、そうですか』って俺たちも簡単に信じるわけにはいかねぇんだよ」
頭をかきむしって土方がため息とともに言う。
詩織はどうすれば信じてもらえるか考える。
で、考えた結果が
「…では、もしここにいる皆さんの名前...当てることが出来たら信じることができますか?」
声を震わせ絞り出して言ったこんなこと。