神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました


そして町へやってきた三人。



だが、


「「「......」」」



三人とも無言。永遠と無言。


普段にぎやかな藤堂でさえ無言。





そんな空気を変えようと藤堂が頑張る。


「て、天気悪いですね!」


「そうですね」


「だからどうしたの、平助?」


「ヴッ...なんでもないです...」



二人に負けて結局無言。




だが、何の目的もなく歩くのも無駄な時間。


「宮野さんはどこか行きたい場所とかありますか?」


「私、ですか?」


詩織が沖田をチラッと見ながら藤堂に答える。



「私は沖田さんに連れて来られただけなので特には...」


「そ、そうですか...
なら、総司はどこに行くつもりだったのさ?」


「......ゃ」


「えっ?」


「...甘味屋です!」


「い、行き先決まってたのかよ!
それなら早く言えって!」


藤堂が叫ぶ。


沖田がどこの甘味屋に行くのかは知らなかったが無駄なことをこれ以上していたくもない。


それならさっさと着いて、ゆっくりとしたかった。








そ・れ・な・の・に!


沖田は藤堂の後ろを不貞腐れて付いて行くだけ。


「そーうーじー?!」


怒る藤堂。しかし


「シーッ 声、大きいですよ」


何故か逆に注意された藤堂。



フッと藤堂が周りを見渡してみると、大声を出したせいか人々の視線が自分たちに集まっていた。


しかも、今度は自分と目を合わせないようにパッと視線を外される。


居心地が悪い。




「どこの甘味屋に行きたいの?」


今度は小声で沖田に顔を寄せ 尋ねる藤堂。


「平助とは行かないから」


プイっとそっぽを向いて ツーンと答える沖田。




これはもしかして...?


藤堂はピーンときたようだ。



「...宮野さんと二人で行きたかったのに 僕がついてきて いじけてるの?」


「なっ!...べ、別にそういうわけでは!!斬りますよ!?」


顔を真っ赤にして藤堂の肩をバシバシと叩く。


図星だ。図星のときの反応だ。




二人の会話を聞こえていなかった詩織は、突然の沖田の反応に呆気に取られる。



そして沖田をからかう材料が出来たとニヤニヤする藤堂は


「みーやーのーさん」


語尾に音符が付くような声色で詩織に前から抱きつく。



「と、藤堂さん 急にどうしたんです!?」



予想外の藤堂の行動に驚いたのは詩織だけではない。


沖田も声にならない叫びをあげている。




そんな沖田の反応を見て


「なんでもないですよー」


フフッと笑って すぐに離れた藤堂。



詩織には藤堂が何をしたかったのか全く分からなかった。



そして二人の後ろでムッとしていたのは沖田。



ずかずかと詩織に近づき ぎゅっと後ろから抱きつく。


「お、沖田さんも何するんですか!?」


「...平助と同じこと」



耳元でボソッと呟かれる。


あぁ、恥ずかしい。恥ずかしすぎる。


顔、真っ赤になっている気がする。



「とにかく離れてください!」


うつむいて 自分の胸をグーッと肘で押す詩織の全力の拒否に沖田はまたまたショックの表情。



それでも 詩織を離そうとはしない。



不機嫌な顔のまま 力をギュッと込める。



「なに?平助のときは拒否しないのに僕だとそんなに嫌なの?」


「そういう訳ではありませんが...これでは原田さんと同じですよ!?」


咄嗟に出た 詩織の言葉に 沖田は固まる。


「は、原田さんと同じですか?」


「同じです。さっきの朝の光景と何ら変わりませんよ?」



沖田の震え声に詩織は淡々と返す。


その隣で藤堂は大爆笑。



しょんぼりとして、しぶしぶといった感じで詩織を離した沖田。



「...付いて来てください」



軽く俯きながら 力なく こう言った沖田の姿に『何だか悪いことしちゃったなぁ』と思った詩織だった。


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