神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました
三人で並んで歩く帰り道。
「沖田さん、今日は良いお店を紹介していただきありがとうございます!」
詩織が満面の笑みを浮かべる。
「いーえ!また来ましょうね」
フフッと沖田が笑いながら朗らかに言う。
その後に
(もちろん二人っきりで)
なんて付け加えるのも忘れない。
「 ───ッ」
詩織は真っ赤になる。
こんなこと、言われ慣れていないから。
ムーッとし始めたのは藤堂。
詩織が自分以外で赤面するのは面白くないようだ。
詩織の背後から抱きつく。
詩織は歩みを止めた。
「藤堂さん、どうかしましたか...?」
もう慣れたもので落ち着いて対応ができる。
「...なんか嫌です」
「はっ?」
それでも藤堂のこんな答えを予想してなかった。
自分でもマヌケだなって思う声が出た。
「何が、嫌でしたか?」
「総司と仲いいこと」
「えっ?
別にそこまで仲いいってわけでもないですし...」
「え〜僕と宮野さん仲いいですよね〜?」
「あ、あのややこしくなるので「仲、いいよね?」
「は、はい...」
会話に突然入ってきた沖田に押された。
鋭い目つきに押された。なんだか悔しい。
藤堂は渋々といった様子で詩織を離した。
「なんか、ごめん」
心なしかショボンとしている。
「あーっ!藤堂さんは悪くないので謝らないでください!」
「え、でも突然抱きついたりとか迷惑、ですよね?」
「そそそそそそれはそうですが...」
「もう、しませんので...」
ダメだ、これ藤堂さん鬱モードに入ってらっしゃる...
詩織は心の中で軽くため息を吐く。
どうすれば元の藤堂さんに戻るかな?
そう考えて出てきたのは一つの考え。
落ち込んでいる藤堂に詩織は近づく。
「藤堂さん」
「宮野さん...」
藤堂が詩織の顔をまっすぐ見た瞬間、詩織は藤堂をギュッと抱きしめた。
「えっ?」
戸惑いの声を上げた藤堂。
「は、離していいですよ!宮野さん」
「もうしない、なんて言わないでください。
なんだか安心するんです、なぜか藤堂さんに抱きしめられると」
「そ、それって...」
「人に触れたのは久しぶりで、だから安心したのかもしれませんね
忘れてください」
藤堂を離し、フワッと詩織は泣き出しそうな顔で彼の目を見て言う。
そこへ
「公共の場でイチャつくのやめてくれませんかねー」
冷めた目の沖田の棒読みのセリフ。
二人して顔を合わせて顔が真っ赤になった。
何、やっちゃったんだろ...
目の前が真っ暗になりかける詩織。
詩織は恐る恐る周りを見渡すと、小さくガッツポーズ。
よしっ!通行人はいないよ!目撃者は沖田さんだけだよ!アハハハハ...
なんて虚しい言葉を小さくつぶやいた。
藤堂の方を振り向いて頭を下げる。
「外で突然抱きついたりとか本当にごめんなさい...」
今度は詩織が鬱モードに。
「ぼ、僕が最初にしたことですし」
「それでも...」
着物の袖をギュッと詩織はキツく無意識に掴んでいた。
何故か涙が零れそうで、唇をキツくキツく噛む。
───ポンッ
詩織の頭に軽く、優しく、手が触れた。
「ねぇ、堂々巡りだからやめません?
それより帰りましょうよ、はやく」
ね?なんて首を傾げ、困ったように沖田は詩織に手を差し出した。
詩織はゆっくりと顔を上げ、悩みながらも沖田の手を掴んだ。
「はい、帰りましょう
三人で!」
明るく微笑む。
詩織が藤堂に手を向けた。
「藤堂さんもですよ」
「僕も、繋いでいいんですか?」
「もちろんです!」
三人で笑い合う。
それでも、長くは続かなかった。
三人で少し歩いたその先で
「宮野さん!今すぐ隠れるか離れて!!!」
沖田が突如 叫んだ。
詩織の手を離して。