神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました



「神さま。あなたは私に嘘をつきましたね?」



神さまがいる(はずである)方向に ピシッと指を立てて向ける。



「……まぁあたしはそこにいないけどいいわ。
あたしが『いつ』『何』を しおりんに嘘ついたか言ってくれる?」



まだ余裕な様子の神さま。



そんな神を見て ニヤリと笑う詩織。


神さまを絶対に追い詰めてやる! と決心する。



「あなたは最初から私を信長さまのところにタイムスリップさせる気なかったですよね?」


「だからそれはあたしの手違 ───」


「手違いなはずがないんですよ。残念ながらね!」


「そんなわけ ───」


「ありますっ!
それを私が今から証明するから黙っていてください!」



言い訳を始めかけた神さまを静止させ、詩織は話し始める。



「神さまはさっき自分が言ったことを覚えています?
さっき『しおりんを新撰組の屯所の前に届けてあげようと思っていた』って言いましたよね?
これって最初から私を新撰組がいる この幕末にタイムスリップさせようとしていたってことですよね?」



『うぐっ』とカエルを押しつぶしたような声を神さまが出した。



しかし 詩織は


「何も違いませんよね?」



神さまに念を押す。



「…とりあえず現実の世界に戻りましょう。
しおりんには悪いけど 新撰組幹部の誰かがすぐに川の中からしおりんを助けてくれるはずよ」



話を無理やり逸らし、終わらせた神さま。


詩織が言ったことが図星だということだ。



「そんなことよりも私をもとの世界に返し ───」


「それはできないわ。しおりん以外に『歴史を変えて!』なんて頼めないし」


「私だったらそんな無茶な事頼んでもいいってことなの!?」


「えぇ。貴女は気づいていないだろうけど能力者ですもの」


「…訳わかんな ───」


「訳わからなくて結構よ。
…しおりん、ご武運をお祈りしています」




最後まで自分勝手な神さまは自分が 言いたいだけ言いたいことを言うと 詩織を現実世界へと返した。










ただし、幕末の京の冷たい川の中に。




川の水が どんどん詩織が着ていたセーラー服に吸い込まれ沈んでいく。



「…誰か……助け…溺れ……る…………」



そう言って思いっきり川の中で暴れた。



だが 誰も気づかずに 詩織はただ沈んでいく。






しかし「おいっ!お前大丈夫か!?」そんな男の声を遠い意識の中で聞き───



安心した詩織は意識を失った。







そう 神さまは重要なことを知らなかったのだ。


詩織が泳げないということに。




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