神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました
そして前川邸の玄関をくぐり抜けると残念、当然のように藤堂が仁王立ちしていた。
「やっぱりさっきの音はアンタだったのかよ」
目を吊り上げ、般若の表情。
詩織はギュッと瞳を閉じ、死を覚悟した。
しかし原田は違ったようで、詩織を自分の背後に隠し 藤堂から庇う。
それが気に食わないのだろう。
凍りつくほどの声色で藤堂は言葉を放つ。
「邪魔だ、どけ
俺はその女に用があるんだよ」
「いいや、そう言われても退かねぇよ」
原田はヘラリと笑い 余裕ぶる。
その一方で藤堂は機嫌が悪くなり 舌打ちを打った。
思わずビクリと怯えた様子をみせる詩織に更に苛つきが増したようで、藤堂は踵を返して屋敷の中へと戻る。
だが数秒後に手ぬぐいと共に藤堂は二人の元へ戻ってきた。
どうやら濡れている二人の為に拭くものを用意してきたようだ。
ん、と詩織に手ぬぐいを渡す。
いや、押し付けると言ったほうが正しいか。
反対に原田には投げつける。
あくまでも手ぬぐいなので与えられるダメージは小さいが。
詩織は恐る恐ると藤堂を見やりお礼を言った。
「あ、ありがとう…ございます」
「別にアンタの為じゃねぇ」
「…それでも、ありがとうございました」
ペコリと腰を折る。
そんな詩織を藤堂はなんとも言えない表情で見ていた。
「あ~ぁ、絆されちゃうのかねぇ」
髪を拭きながらそう呟いてしまった原田はすかさず藤堂に叩かれていた。
口は災いのもと、なんてことわざはこんな時に使われるのかな?
詩織は思わずそんな考えが頭に浮かんで小さく微笑んだ。