神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました



それから数分後。



とうに体は拭き終わり、藤堂と別れ、原田の部屋で休んでいた詩織のもとに



「宮野!おまえは何やってんだ!」



そんな怒鳴り声と共にやってきたのは土方。


そしてその後ろを 土方をまぁまぁと宥めながら近藤が付いて来ていた。



突然の二人の来訪に原田は驚きのためか目を大きく見開いた。


反面、怒られる原因に心当たりがあり過ぎて ゲェッと顔をしかめる詩織に土方の雷が落ちる。



「おまえがなんで八木邸にお世話になってるのか言ってみろ!」


「…前川邸には藤堂さんがいらっしゃるから、でーす」


「それが分かっているのなら何故おまえは今!ここに!!いるんだよ!!!!!!」


「…暇つぶし、ですかね?」



わざと小首をかしげて 顔の前で両手をあわせてグーにするぶりっ子ポーズで答える詩織に更に雷が落ちる。



「そ!れ!な!ら!
来るなら来るで藤堂に見つからないようにしろよ!」


「それは次から ─── 」


「次なんて こさせねぇよ!!!!!」



ハァハァと肩で息をする土方に 詩織は仕方がなく、はぁーい と返事した。



そして土方に背を向けて、これで話は終わったと、ジトリと土方から睨まれながらも 原田との会話を再開させる。


原田は頬を引きつらせながらだったが詩織との会話に付き合った。


内容といえば、くだらない世間話。



和やかに話す二人に、怒りに震える男が一人、そして穏やかな笑みを浮かべて見守る男が一人。




そこにドタドタと部屋に近づいてくる一人の足音。


スパーンッと勢いよく ふすまを開かれ、そこにいたのは芹沢。



「小娘!迎えに来たぞ!」



芹沢の姿を確認した土方はチッと舌打ちを鋭く打つ。


しかし芹沢はそれを気にせず、詩織のもとにやってきた。



「ありがとうございます、芹沢さん。
ですが、私はもう少しだけこちらの方たちと話していたいと思います。
…ダメでしょうか?」


「お主がしたいようにすれば良い!」



という訳で、原田と話を再び続け───


られるはずもなかった。




土方が芹沢に突っかかる。


しかし芹沢は土方を歯牙にもかけない。


その間で原田が困ったようにオロオロとしていた。




芹沢さんがやってきて 賑やかになったなぁ、と一人にこにこする詩織の横に 近藤が近づいてきた。


何か私に用があるのかな?なんて不思議に思う詩織にコソコソと小さく囁かれる。



「宮野くん」


「なんでしょうか?」


「突然だが芹沢さんのこと、どう思うかね?」



呼吸を忘れた。


ぱちりと眼を瞬かせ、近藤の顔を見つめれば ニコニコと微笑まれた。


それでも気がついてしまった。


目が、笑っていない。


詩織は近藤と同じように微笑みながら小さな声で答えた。




「そんな質問、しなくても大丈夫ですよ。
あくまで私は貴方方 近藤さんたちの味方のつもりでいます。
例え信頼されていなくても、ね?」


「もしかして宮野くんを疑っているように聞こえたのかね?」


「はい」



そうハッキリと答えてしまえば苦笑いを浮かべられた。



「そんなつもりはなかったんだがねぇ」


「ですが一つだけ覚えていただけると嬉しいです」


「何をだい?」


「私が皆さんの味方でいるのはあくまで“今”の話しです。
…ないと信じたいですが、私が芹沢さんの味方になり、貴方方の邪魔となる存在になってしまいましたら 遠慮無く切り捨ててください」



真剣な表情で伝える詩織に 近藤はヒュッと息を呑んだ。




この時の詩織の強い意思を知る者は近藤ただ一人であった。


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