神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました





しかし、ここで問題が発生。


ここは何を隠そう 男だらけのむさくるしい屯所。


そんな場所に若い女を連れてみろ。



「「「組長!!!女ですかッ!?」」」



二人の周りに隊士たちが集まり すぐに身動きが取れなくなった。


さっきまでは鬼の副長がいたから近寄ることを遠慮していたようだ。



「あー…お前ら邪魔だ邪魔」



集まってきた隊士たちを少女を抱えた永倉が退ける。



不満顔ながらも 組長の言うことは聞こうと渋々と離れる隊士たち。




しかしコソコソと



「ほら…組長はきっと自分のオンナを他の野郎に見せたくないんだよ」


「あの人最近島原でもモテないから…」



恨みがましく自分たちの持ち場へと戻っていった。



その言葉がはっきりと聞こえていた永倉。



「…お前らがそう思っていたことは充分に分かった。後で覚悟しとけよ?」


「ヒッ」



隊士たちは般若のような永倉の笑顔を見て 自分らが言った言葉を後悔したそうな。




同じようなことが部屋に着くまで二・三回繰り返された。





「だぁぁぁぁぁあぁぁ!!!
今日は一体何なんだよ!!!」



やっと着いた部屋で雄たけびをあげた永倉。


一緒に少女を連れてきた原田はもう永倉を落ち着かせることを諦めた もよう。



「そりゃあ女の子を抱えて屯所の中を歩いたら…ねぇ?」



誰も相手をしないので仕方なく永倉の相手をしたのは同室の藤堂平助。



彼も最年少ながら壬生浪士組の幹部を務めている。



「で、しんぱっつぁんはその子…どうするつもり?」



苦笑いで藤堂が永倉に聞いた。



きっと面倒見の良いしんぱっつぁんは少女の面倒を見ちゃうんだろうな~…と思いながら。



やはり藤堂が思ったとおり



「……この部屋に置きたいんだが...だめか?」



永倉はここに少女を置きたいようだ。



藤堂としても何ら問題はない。


寧ろ大歓迎だ。



だが、たった1つ問題があった。



「僕は別にいいけど…一くんはどうするつもり?」


「「…あぁ 忘れてた!!!」」



藤堂がそう尋ねると 永倉と原田は仲良く頭を抱えた。


今はいないもう一人の同室。


斎藤一のことは頭から抜けていたようだ。



何を隠そう 斎藤一というこの男。


彼も壬生浪士組の幹部なのだが 二人も驚くほどの極度の女好きなのである。



…それさえなければ申し分はないんだがな。


ちなみにこれも皆が思っていることであるが。



「さすがに女好きがいる部屋には置けないわなぁ」



自分たちのことは棚に上げてボソッと呟いた原田。


しかし原田の言葉に二人は賛同する。



それでも だからと言って土方に「少女の面倒は俺が見る!」と言った手前 外に放り出すことも出来ない。



そこで三人で悩んで出てきた苦肉の策は『"なるべく"少女と斎藤一を近づけない』ことだった。


ありきたりだが 何もしないよりはマシだろう。






それからほんの少し経って、ジーッと少女を見ていた藤堂が嫌な予感を抱きながらも 全く動かない二人に問う。



「僕思ったんだけどさぁ…この子の服どうするの?
濡れてんだけど」


「「着替えさせるんだよ」」


「誰が?」


「「お前しかいないだろ」」



見事にハモって答える原田と永倉。



ようやく自分が置かれている状況に気づいた藤堂。


顔がだんだんと赤く染まっていく。



「な…二人がこの子を連れてきたんだから最後まで責任もって面倒見てよ!」



真っ赤な顔のまま怒鳴るもんだから全然怖くもなんともない。




そんな藤堂を黙らせようと



「え~平助は俺らがこいつの着替えをさせてやった方がいいと思ってるわけ?」



原田が唇を尖らせて言った。




しかも面倒なことは押し付けようと



「俺らがこいつにあ~んなコトやこ~んなコトしてもいいんだな?」



永倉もニヤニヤと原田と一緒に藤堂をあおる。






「わぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!」


藤堂は二人の言ったことを想像でもしたのか顔を最大級に真っ赤にさせ叫んだ。


「それはダメ!!!
僕がやればいいんでしょ!?
分かりました!!!」



二人に嵌められたと分かるものの自分が着替えさせた方が安全だと納得した藤堂。



顔を真っ赤にさせながらも 大人しく少女を着替えさせようとした。






が、



「…誰の服に?」


「「だからお前のしかないだろ、大きさ的にも」」


「ですよねぇぇぇえぇ!!!」



またもハモって答える原田と永倉。


よくもここまで…と思う。



そこまで少女の面倒は見たくないのか…


段々と頭が痛くなってきた藤堂。


そしてこれからもこの子の面倒は僕が見るんだろうな…


嫌な確信を持つ。




そうして四苦八苦しながらも藤堂は一人で少女を着替えさせた。



藤堂が少女を着替え終わらせたタイミングを狙ったのか 斎藤が部屋へ帰ってくる。



「あぁ、女はここで面倒を見ることになったのか」



少女を見て それはそれはいい笑顔で斎藤が言う。



「な、なんで一くんはこの子がいることに驚かないの!?」



少しは斎藤も少女に驚くだろうと思っていた藤堂が逆に驚く。



「なんでかって…永倉たちがさっき大声で話してただろう」



さも当たり前のようにサラッと言った斎藤。


反射的に永倉たちをキッと睨んだ藤堂。



当の本人たちは藤堂の睨みなどまったく気にしてはいなかったのだが。



「それに副長もブツブツ『チッ女かよ…』と呟きながら局長室に行って ───」


「で、一くんは何しに来たの?」



余計な情報も斎藤の口から出たような気がしたがそれは聞かなかったことにした藤堂。


これ以上いらないことを聞かされる前に口早に言葉を重ねた。



それで部屋に来た用件を思い出したのか 斎藤が手を打ちながら言う。



「局長がアンタらをお呼びだ。
その少女の処遇について話し合うそうだ」



< 7 / 43 >

この作品をシェア

pagetop