口の悪い、彼は。
 

「ね、部長?私のこと、何て呼んでくれるんですか?“高橋”のままですか?」

「……何て呼んで欲しい?別に俺は今までと同じで呼んでもいいけど」

「!……ほんとズルい」

「どっちが?ズルいのはお前だろ。小春」

「!もう、やっぱりズルいっ」


突然呼ばれた名前にドキッと心臓が音をたてる。

それを誤魔化すように部長の腕を軽く叩くけど、名前を呼んでくれることが嬉しすぎて、つい表情が緩んでしまう。


「そう言う割には嬉しそうだな」

「……当たり前じゃないですか。好きな人に名前を呼んでもらえたんですから」

「ふぅん」


緩んでしまう顔を押さえるようにして、私は頬を両手で包み込む。

そんな私のことを、ソファーの背に腕を置いて笑顔はないけど何となく楽しげに見てくる部長に対してまた心臓の鼓動が少し速度を増した。


「……部長?」

「あ?」

「私、調子に乗ってもいいんですよね?自惚れてもいいんですよね?」

「……勝手にしろよ。つーか、いい加減疑うのはやめろ」

「それ、照れてるんですか?それとも、優しくしてくれてます?」

「うるせぇな」


端から見たら全く照れたようには見えないけど、何となくの雰囲気で照れてくれているのかなと思った。

勝手な思い込みかもしれないけど、否定はされないからいいように思い込んでいたい。

 
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