口の悪い、彼は。
 



私の目の前には昨日とは違って、いつも通りのスーツ姿の部長がいる。

ラフな格好も良かったけど、やっぱりスーツ姿には永遠の萌えがある気がすると、ドキドキと高鳴っていく心臓を抑えることに私は必死だ。


「おい、高橋」

「は、はいっ!?」

「返事は短くていい」

「うっ!すみません」

「ほんと、学ばねぇな。ったく」

「……」


今私が提出した資料に目を通し、あるところでぴたりと目線を止めて眉間に深い皺を寄せてハァとため息をついた部長の様子に、嫌なドキドキに変わった。

冷や汗が出る。

……嘘、何かミスってた?


「お前もまだ新人気分か?」

「!」

「メールで送った案件が抜けてる!入れとけっつっただろ!?今すぐ直してこい!」


バンッと資料をデスクの上に投げ出されて、はっと思い出した。

紙資料になっていない案件があるから、それも一緒にまとめておけと言われたことを。

さーっと血が引いていくのを感じる。

こんな凡ミスをするなんて、私バカだ……!


「っ、す、すみません!すぐ直してきます!」

「ったく、どいつもこいつも!」


吠える部長に向かって私はペコッと頭を下げて、自分のデスクに戻った。

その途中でさっきまで同じように部長に怒られていた営業さんと目が合って、お互いに気まずい表情で顔を合わせた。

 
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