口の悪い、彼は。
自己嫌悪のまま、資料を作っていく。
追加資料は意外と量があって、夢中で打ち込みをしていた私は定時が過ぎたことにも気付いていなかった。
浮かれてるって思われたかもしれない。
……それは確かに間違ってはいないけど、きっと部長はプライベートを仕事に持ち込むような人間は嫌いなんじゃないかと思う。
しかもいつもはしないような凡ミスまでしてしまって。
最悪だ。
呆れられて嫌われちゃったかもしれない。
……って、ダメダメ。
今は落ち込んでる暇なんてない。
ちゃんと集中しなきゃ。
「高橋」
「!……喜多村さん」
「最近なかったのに、久々にやられてたなー。ドンマイ」
すっと視界の中に入ってきた手と私が好きなチョコレート製品にはっと振り向くと、喜多村さんが苦笑いをして立っていた。
どうやら、ちょうど怒られているところを見られてしまっていたらしい。
情けなすぎる。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。私が悪いんですから」
「そっか。まぁ、ミスはミスだしな。頑張れよ」
「……ありがとうございます」
「うん。それ、好きなんだろ?やるから食って元気だせよ」
「あ、ありがとうございます。でも……私、これが好きってこと、喜多村さんに言ったことありましたっけ?」
「ううん。あいつが“小春が弱ってたら、これあげて”って言ってたから」
「……はぁ。敵わないなぁ」
「愛されてる証拠だな。たまに妬けるよ。なーんて」
喜多村さんはくすくすと笑いながら、私の頭をぽんぽんと軽く叩いて去っていく。
喜多村さんとお姉ちゃんの優しさが身に染みて、頑張らなきゃと強く思った。
もう、信用をなくすような仕事はしないようにしなきゃいけない。