口の悪い、彼は。
10分後にようやく解放された時には、私は身体に力が入らないくらいに溶かされてしまっていた。
「起こしてやった礼くらいはもらわねぇとな」
「~~っ」
そう言いながら濡れた唇をぺろりと舐める千尋もセクシー過ぎて、視界でもやられてしまう。
悶えそうになる私を差し置いて千尋はむくりと身体を起こし、私を見下ろしてくる。
「ほら、起きろ。本気でヤバいんじゃねぇか?」
「誰のせいよ……っ!昨日だって千尋が……っ」
「あ?お前がねだってきたんだろ?」
「そんなことしてないもん!」
寝かせてくれなかったのは千尋なのに!ときっと睨み付けた時、ふわりと私の上半身が持ち上げられ、ちゅっと唇をぶつけられた。
「んっ」
「この続きは夜だ。早く行け」
「!」
そうだよ。
今はこんな風に言い合いをしている暇はない。
むしろ、笑顔でいたい日だ。
力の戻りきれていない身体を必死に奮い立たせて、私はするりと千尋の胸の中から抜け出す。
「うん!じゃあ、先に式場で待ってるね!千尋も遅れないで来てね!」
「あぁ。わかってる」
服を着終わって立ち上がった時、横から「派手に転けんなよ」という言葉が飛んできて、私は千尋に笑顔を向けて「任せといて!」と頷き、部屋を出た。