口の悪い、彼は。
 

「お似合い、なんて、そんなこと言われる日が来るなんて思ってもみなかったよ……。だって彼はすごく大人で人を惹き付けるような人だけど、私はやっと年齢相応くらいなんだもん」

「そんなことないと思うよ。確かに小春、1年くらい前までは“かわいい”って言葉の方がぴったりだったけど、会わない間にすごく綺麗になったから。何かあったのかなとは少し思ってたの」

「!う、嘘~綺麗だなんて、またまたっ!おだてても何も出ないよっ?」


私はあははっと笑い飛ばしてしまうけど、お姉ちゃんはそんな私を笑うことなく、真っ直ぐ私のことを見ている。


「ね、小春」

「う、うん」

「彼といて、幸せ?」

「!」


私を見てくるお姉ちゃんの目は優しいのに真剣なもので、私のことを考えてくれているんだなと感じた。

それなら私も心の中にある気持ちを素直に言うだけだ。


「……うん。口は悪いしよく怒られちゃうけど、すごく尊敬してるし本当は優しい人なの。それにね、彼のこと、すごく好きなんだ。一緒にいれるだけで幸せだし……安心できるから」

「……そっか。うん。それ聞いて安心した」


お姉ちゃんは軽く微笑んで、私の手をぽんぽんと撫でてくれる。

友達には彼氏がいるとは言っているけど、ずっと千尋以外には言うことはなかった私の気持ち。

素直に言えるのはお姉ちゃんが相手だからだと思う。


「お姉ちゃん」

「なに?」

「話、聞いてくれてありがとう。喜多村さんと一緒に、たくさん幸せになってね」

「……うん。ありがとう、小春。小春も、彼と仲良くね」

「うん。って、将来を約束してるわけでもないし、まだどうなるかわかんないけどね!でも、大切にしたいと思ってるから」


涙が出そうになるのをこらえて、私はにかっとお姉ちゃんに笑いかけた。

私も。千尋ともっとたくさん一緒にいれることを願おう。

 
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