口の悪い、彼は。
「おい」
「……好きだよ?千尋」
「……」
答えが返ってこないことなんてわかってる。
でも、私は自分の気持ちを伝えたい。
「好き」
「……」
「千尋のことがすごくすごく、好きなの。どうにかなっちゃいそうなくらい、好き」
言葉だけじゃ伝えきれないほどの気持ちになっていて、でももっと伝えたい私はぎゅうっと千尋を抱き締める。
「……はぁ。離れろ」
「……やっぱ、迷惑?」
「いいから。離れろつってんだよ」
「っ」
千尋の怒ったような低い声が耳に届いて、私はビクッと身体を震わせてしまう。
あまりにもしつこいから怒らせてしまったのかもしれない。
……せっかく今日は素敵な1日でずっと笑顔でいれたのに、簡単に崩してしまうなんて私は何てバカなんだろう。
でも……今、伝えたかったから。
私は言われる通りに千尋から離れ、一歩後ろに下がる。
また距離ができちゃったな、っていうかむしろ自分から広げちゃったよ、と俯いた時。
「んむっ!?」
突然くるりと私の方を向いた千尋は私の腕をぐいっと引き、ぶつかるようにして私の唇を塞いできた。
千尋からふわりと香るのはタバコのフレーバー。
チュッとリップ音を鳴らしながら何度か唇を合わせられた後、千尋は私のおでこに自分のおでこをコツンと当ててくる。