口の悪い、彼は。
8.ツンツンリーマンの過去。
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お姉ちゃんと喜多村さんの結婚式があった日の2日後の週明け、私はまだほくほくした余韻を感じていた。
お姉ちゃんのウエディングドレス姿やカクテルドレス姿、披露宴の雰囲気を頭の中に浮かべるだけで、顔が緩んでしまう。
……もちろん、浮かれてミスして怒られるのは嫌だから、何とか気は引き締めようと頑張っているけど。
今日は仕事も立て込んでいなくて、残業もほとんどなく帰れそうだ。
「お疲れ~」
「お疲れ様です!佐東(さとう)さん」
定時間近、営業の佐東さんが話し掛けてきて、私はパソコンのキーボードを打っていた手を止め振り向いた。
「これ、今日の伝票ね。よろしく」
「はい」
「そういえばさ、高橋さんって部長の彼女のこと知ってたんだなー」
「……はいっ!?」
佐東さんの言葉に対して、口から飛び出して社外に出ていきそうなくらい、私の心臓がドッキーーーンと大きく跳ねたことは、もちろん言うまでもない。
そのせいで伝票を受け取る手もビクッと震えてしまった。
ままま待って!?
どういうこと!?
「部長の彼女」って……まさか、私たちのことがバレたってこと!?