口の悪い、彼は。
 

突然訪れた展開に、私は焦る。


「あっ、あのっ」

「喜多村の結婚式の時に見たんだよ」

「!!!」

「高橋さんと仲良さそうに喋ってるところをさ」

「~~!!」


核心に一気に迫ってきた佐東さんの言葉に、私は何も答えることができず、ただただ、サーっと血の気が引いていくのを感じていた。

心の中で焦りまくる私に対して、佐東さんはニコニコと笑って私のことを見ている。

ど、どうしよう……。

ここまでバレている状態で、この私に千尋とのことを誤魔化すことなんてできるの?

今日に限って千尋は直帰で会社にはもう戻ってこないし、そうなれば、営業のみんなはここぞとばかりに伸び伸びとお喋りするだろうし、私一人で何とかしないといけないということだ。

というか、この話が他の人にも広まらないうちに、話を終わらせた方がいい。


「さ、佐東さん!」

「ん?あ、すっごい美人だよな~部長の彼女!前に見た時も思ったけど、出るとこ出てスタイルはいいし、キリッとした感じが部長とお似合いっていうか。部長も落ちるわけだよ」

「……あの?」


待って。

何か話が……私を向いてなくない?

“美人”なんて言葉、私を指すはずないし、そもそも、私はスタイルも良くなければ、“キリッ”なんて言葉は一番縁遠いものだ。

バレてないのはすごく助かるけど……じゃあ、佐東さんは誰のことを部長の彼女だなんて言ってるの?

 
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