口の悪い、彼は。
親族席は後ろの方だったし、挨拶もしに行ったから、結婚式に来てくれていた人のことはよく覚えている。
お姉ちゃんの知り合いでベリーショートの人はひとりしかいなかった。
その人物が私もよく知っている人で、私の心臓がどくどくと嫌な音をたて始める。
その人は……美都さんだ。
……美都さんが、千尋の彼女……?
ってことは、私と付き合う前までは美都さんと付き合ってたってこと……?
どくりと心臓が唸り、胸が締め付けられる感覚に襲われる。
今は私が千尋と付き合っているんだから、たとえ昔の彼女が美都さんだとしても何も気にしなくてもいいんだ、と思いたいのに、そう割り切れない私がいた。
はっと思い出す。
披露宴の時、美都さんと話していた時のことを。
美都さんはうちの会社に知り合いがいるようなことをほのめかしていた。
それは千尋のことで……『実は私の元カレがいるのよ』と言おうとしていたのかもしれない。
……それは真実なの?
「高橋さん?誰かわかった?」
「!……あ、いえ。ほらっ、スタイルのいい美人さんなんて転がるようにいましたもん~!」
「えーそっか。いや、でも、喜多村の奥さんも超綺麗だよなー!高橋さんのお姉さんってことを聞いた時も驚いたけど、実物見てからも驚いたよ」
「でしょ、でしょー!ずっと自慢のお姉ちゃんなんです!」
佐東さん、そして話に加わってきた他の営業の人たちとわいわいと話しながらも、私の心の中には“千尋と美都さんが特別な関係だったかもしれない”ということがぐるぐると回っていて……笑顔の裏で、苦しさに襲われていた。