口の悪い、彼は。
ボロが出ないようにしないとな、と思いながら、私は喜多村さんのことを見上げる。
「部長ならついさっき出ていかれましたけど、何も持って行ってなかったみたいですし、煙草なんじゃないですか?」
「んーさっきは喫煙室にはいなかったんだけどな」
「どこに行ったんだ?」と喜多村さんが首を傾げた時、オフィスのドアがガチャッと開き、それと同時に声が聞こえてきた。
「だーかーらー!あいつを出せって言ってんのよ!」
「自分でアポを取れよ。簡単だろ?」
「はぁ?どうせのらりくらりとふらついてるんでしょうよ!今呼んでくれてもいいじゃない!」
「あのな……、あ、喜多村。こっち来い」
「はいっ!」
突然名前を呼ばれた喜多村さんがビシッと気をつけをして返事をした気配がした。
私はというと……オフィスに入ってきた二人の姿に釘付けだった。
そこにいるのは千尋と……美都さんだったから。
あの千尋と対等に怯むことなく話している美都さんは生き生きしているように見える。
喜多村さんからぼそりと「あれっ?あの人って」という言葉が溢れたのが耳に入ってきた時、美都さんの視線が私を捕らえた。
その瞳は黒目がちで大きく、キラキラと輝く。