口の悪い、彼は。
「おい。何ボーッとしてる?ちゃんとわかってんのか?」
「あ、は、はいっ」
「返事は短くていい」
「……はい」
こんな一面があると知ってしまえば……部長のことをもっと知りたいと思ってしまうのが興味心というもの。
部長は他にどんな表情を持っているの?
どんなことを考えているの?
ぼんやりと部長を見ていると、急にその距離が近付いた。
「っ!?」
部長が私の顔をひょいと覗き込んできたのだ。
距離30センチのところには部長の端正な顔があって、圧されてしまった私はつい息を止めてしまう。
遠くから見ても迫力のあるイケメンなのに、近くで見ると何百倍にもそう感じてしまうんですけど……!
部長はカッコ良すぎるんだ。
こうやって口を開かなければ、今にも甘い言葉が出てくるんじゃないかという錯覚に陥りそうになる。
ツンツンさえなければ、お買い得商品に間違いないのに!
……って、部長って結婚してるんだっけ?
聞いたことはないけど……まぁ、結婚してなくても、彼女の一人や二人はいそうだよな。
そんなことを考えながら一歩後ずさろうとした時、部長が私の目をじっと見据え、はぁとそれはそれは大きなため息をついた。
「やっぱりわかってねぇだろ?もういい。時間の無駄だ。ほら、さっさと出るぞ」
「はっ、はい!」
「……はぁ。」
またもや思いっきり呆れたため息をついて、部長は自分のデスクに向かい始める。
こんな風にため息をつかれたら、いつもならビクビクしてしまうというのに、今は全然怖いと思わなかった。
だから、私はパソコンの電源を落としながら、同僚に話し掛けるのと同じように部長に話し掛けてしまっていた。