口の悪い、彼は。
……走って、走って、私は自分の部屋に戻った。
部屋に入った途端涙が溢れ出し、ぽたぽたと涙を落としながら私はフラフラと部屋の中に入り、ベッドの上にボフンッと倒れ込む。
そのまま枕に顔を埋めた。
涙が一気に溢れてくる。
「う~……っ」
千尋はいつから私と別れることを考えていたんだろう?
最初から?
私と付き合っているうちに自然と?
それとも、比奈子さんと再会してから?
いつから千尋がそんな風に思っていたのかはわからないけど、「別れるか」と言われたことは紛れもない事実だ。
私のことを好きでいてくれるならそんな言葉は絶対に出てこないはず。
それを言われたということは千尋は私のことを好きだと思ってくれていない証拠なのだ。
だって、千尋は思ってもいないことは口に出さない性格だから。
でも、と私の頭の中に自分に都合のいい仮定が思い浮かんでしまう。
……もし、私が別れたくないとすがっていれば、何か変わった?
もし、ヤダと駄々をこねていれば、何か変わった?
今頃、千尋のぬくもりに包まれていた?
……今から謝れば、まだ間に合う?
ワガママを言わなければ、これからもそばにいさせてくれる?
……ううん。
きっと、今更そんなことをしても、もう遅い。
千尋は一度口に出した言葉は曲げない。
これは、私の子どもみたいなヤキモチが招いた結果だ。