口の悪い、彼は。
喜多村さんは疑心暗鬼みたいだったけど、何とか誤魔化せただろうか。
喜多村さんには私の様子がおかしいなんて思われないようにしないといけない。
連鎖してお姉ちゃんに伝わってしまうし、幸せいっぱいの新婚さんに心配なんて掛けちゃいけないから。
しかも、お姉ちゃんにせっかく応援してもらったのに、その直後に千尋とケンカして別れ話が出ているなんて、縁起が悪すぎるから知られたくない。
もう少し時間が経って、平気になったらお姉ちゃんに言おう。
……その前に、千尋ともちゃんと話さないといけない。
「……よし。とりあえずは目の前のことを片付けよう」
私は気合いを入れて、今日の分の伝票の入力作業、そして締め作業を行っていく。
オフィスの時計が22時を回った頃、ようやく締め作業のチェックまで終わった。
提出期限は来週の月曜日だけど、念のため明日再チェックをした後、明日中には提出できそうだ。
休み前に提出しておきたかったから、間に合いそうで良かった。
ふぅ~と息をつきながら、メーラーを開く。
もう今日は帰るつもりだけど、明日の朝一で返した方がいいようなメールがないか、チェックだけしておこうと思ったのだ。
メーラーが開いてメールが読み込まれた瞬間、飛び込んできた名前に私はびくっと身体を震わせてしまった。
……その名前が“真野千尋”だったから。
仕事のメールだとわかっているのに、その名前を見るだけでドキドキと心臓が高鳴っていくのを感じる。
何となくすぐにメールを開くことはできず、他のメールからチェックをしていった。
……そして、最後の1件。
千尋から送信されたメールをカチカチッとマウスクリックし、開いた。