口の悪い、彼は。

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千尋がいない1週間は長かった。

仕事に余裕がある時に頭に浮かぶのは、いつだって千尋で。

何をしていても、千尋のことばかりを考える毎日だった。

……千尋はもう私のことを考えてくれたりはしてないのかな。

千尋のことだから、仕事に夢中になって、頭の片隅にすら私の存在はなさそうだけど……。

たくさんの人で賑わう待ち合わせスポットの壁に寄り掛かって、そんなむなしすぎることをもやもやと考えながら私はハァとため息をつく。

笑顔で溢れる空間の中に落とされたため息はその場に相応しくないものだと気付いて、私は慌てて息を吸い込んだ。

その時。


「小春ちゃん!」

「!」


左方向から私の名前を呼ぶ声が飛んできて、私ははっとその方向に顔を向けた。

目に映るのは待っていたその人……比奈子さん。


「比奈子さん!こんばんは」

「こんばんは。今日は突然呼び出したりしてごめんね。お仕事大丈夫だった?」

「あっ、はい!先週末に山は越えたので、今は大丈夫です」

「そっか。なら良かった」


比奈子さんがほっと胸を撫で下ろして、私に向かってやわらかく微笑んだ。

 
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