口の悪い、彼は。
何だかばつが悪くなってしまってペコッと頭を下げてしまうと、比奈子さんはくすくすと笑った。
「ね、小春ちゃん。結婚式の時にね、真野くんと少しだけ話したの」
「え?」
「その時に“今大切にしてる人、いるの?”って聞いたんだけどね……真野くん、“まぁな。しょっちゅう言い合いしてる”って答えてたよ」
「……!」
「それって、小春ちゃんのことだよね?」
「~~っ」
千尋がそんなことを言ったの?
……その言葉は私のことだって思ってもいいの?
「真野くん、何だか少し雰囲気がやわらかくなった気がしたの。それに、“言い合いしてる”って言った時の表情が何だか楽しそうに見えた。小春ちゃんと一緒にいるおかげかもしれないね」
「や、そんなこと……っ」
肯定なんてできるわけはなくて、私はふるふるっと頭を横に振る。
比奈子さんの言葉の通りならどんなに幸せだろう。
私は千尋にとってそういう存在になりたいとずっと思っているから。
ほんの少し見えた光に、千尋に会いたいという気持ちが膨らむけど、あんな子どもみたいな嫉妬をぶつけた後だ。
結婚式の日とは状況が違う。
千尋はもう私には愛想を尽かしているかもしれない。
「別れる」という言葉を出してくるほどに。
……会いたいのに会うのが怖い。