口の悪い、彼は。
10.ツンツンリーマンの台詞。
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***
今日起きた時から、ううん、昨日の夜からずっと私はそわそわしていた。
……今日、1週間以上ぶりに千尋に会える。
私は何だかいてもたってもいられなくて、いつもより早く家を出て徒歩でオフィスに出社した。
営業の人は立体駐車場への車の車庫入れがあるから、混雑する前にと少し早めに来る人がいたりするけど、今日はまだ誰もオフィスには来ていない。
窓を開けて空気の入れ換えをしたりデスクや棚の上を拭いたりしていたけど、やることがなくなってしまって手持ち無沙汰になってしまった。
壁にかけてある連絡ボードに近付き、見上げる。
今日オフィスに残るのは千尋ともう一人の営業の人のようだ。
就業時間中ずっと、オフィスに千尋とふたりきりではないことに対して、私はホッとした。
仕事とは言え、ふたりきりでひとつの部屋にいるというのはまだ耐えられる自信はないから。
千尋と話そうという決心をしたものの、どうやって切り出せばいいのかわからなくて私は悩んでいた。
会社では他の人がいるから話せないし、だからと言ってメールで誘うのも何となく嫌だった。
そもそも、千尋はメールがあまり好きではないから、下手したら返してくれない可能性だってある。
やっぱり電話するのがいいのかな……。
でも、どのタイミングで?
朝?昼?夜?
土曜?日曜?
さすがに部屋に押しかけるのは迷惑だろうし、追い返される可能性だってあるのにそんな勇気はさらさらない……。