口の悪い、彼は。
私っていつもどうやって千尋に連絡していたっけ?とさらに頭を悩ませ始めた時、オフィスのドアががちゃっと開いた。
私は身体をビクッと跳ねさせてしまう。
「っ!」
「高橋。おはよう」
「あっ、おはようございます。喜多村さん」
そこにいたのは朝から爽やか笑顔の喜多村さんだった。
喜多村さんは私に話し掛けてくれながら、自分のデスクに向かう。
「ん?今日、早くない?こんな早い時間に高橋がいるなんて、珍しい気がする」
「今日は天気もいいから、何かうずうずしちゃって早く出てきちゃいました」
「あー、ほんとな。朝から超気持ちいい青空だよな」
「ですよね~!お散歩日和だし、すでに会社飛び出しちゃいたいくらいです!」
喜多村さんがデスクに荷物を置いて窓の方に歩いていくのを見て、私も同じように窓の方へ向かった。
そしてふたり並んで窓のサッシに寄り掛かり、そよそよと心地よい風に吹かれる。
「わ。気持ちいい風~」
「うん。だなー」
喜多村さんとふたり、のほほんと外を眺める。
会社に向かう途中、あまりの気持ちよさに一瞬だけこのまま旅に出ようかななんて思ってしまったけど、さすがにそれはできないか、と何とか踏みとどまった。
時間はあったから、近くにある公園を散歩してきても良かったかもしれないけど……それ以上に私はここに来たかったんだ。
千尋と話すきっかけをどうしようかとは思っているものの、話そうと決めてしまえば、私の心はすっきりとクリアになった気がしていた。
……そう。まるで、千尋に片想いをしていた時のように、ただ千尋に会いたいという気持ちが私を覆い尽くしているんだ。