口の悪い、彼は。
 



「高橋、ちょっと」

「っ!……はい」


午後の仕事が始まって少し経った頃、突然千尋が私を呼んだ。

一瞬ドキッと心臓が音をたててしまったけど、私は深呼吸をして冷静に返事をした。

仕事なんだから、余計なことは考えずに気を引き締めないといけない。

千尋のデスクの前に立つと、千尋の目線がふと上がり、私を捕らえる。

真っ直ぐ見てくる瞳はいつでも変わらない。


「これとこれ。あと、共有フォルダのいつものところにも、これと同じ名前で上げてるやつがあるから、まとめて注文書を今日中に出しておいて」

「!……こんなに、ですか?」

「あ?」

「あっ、いえ。量がかなり多いので……驚きました」

「注文がたくさんあるのはいいことだろ。あと、これは明日の昼の会議で使うから、悪いけどまとめといて」

「……はい」


ドサドサと降ってくる仕事に、私の頭の中は段取りを考えるのに必死になる。

今日は元々あった仕事もまだ終わっていないから、残業確定だ。

……まぁ忙しい方が無駄なことを考えなくて済むし、仕事上だけでも役に立てるのは嬉しいからいいけど。


「じゃあ頼んだぞ」

「あっ、はい」

「返事は短くていい」

「……すみません」


いつものようにそう言われてしまい、本当に何も変わらない“部長”に私はぺこっと頭を下げて、自分のデスクに戻った。

 
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