口の悪い、彼は。
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覚悟を決めた週末がついに来てしまった。
……まだ約束は全く取り付けていないし話し掛けてすらいないけど、千尋と話そうと決めている週末が。
とりあえず今は、今週の仕事が終わったということに対して清々しい気分でいっぱいで、私は無駄にテンションが高くなっていた。
「じゃあ、それで決まりな!」
「はい!」
今日は朝から企画の仕事に行っていた喜多村さんが、定時が少し過ぎた頃にオフィスにテンション高く戻ってきて、私のデスクにおしゃべりをしに来ていた。
おしゃべりのメインは私の喜多村家新居訪問についてで、「やっと落ち着いてきたから、いつでも遊びにおいで」というものだった。
「来月の頭の週末ってことは~……、3週間後!めちゃくちゃ楽しみです~!」
「うん。知夏も楽しみって言ってたし。つーか、あれ、何?薄々感じてはいたけど、俺といる時よりも高橋の話をしてる時の方が楽しそうなんだけど。珍しくテンション上がってるみたいだったし」
「わ、嬉しい!っていうか、気付くの遅くないですか?私、お姉ちゃんにすっごく愛されてるんですよ~」
ふふふと笑うと喜多村さんの手が伸びてきて、私の頭をぐしゃぐしゃと掻き回してくる。
「ひゃっ!?ちょっと喜多村さんっ」
「くそー!悔しい~!」
「わぁ、わぁ!酷いっ」
「俺もこんなに愛してんのに!妹の高橋のこと!知夏にだって負けねぇし!」
「はい!?そっちですかっ!?」
てっきり私がお姉ちゃんに可愛がられていることに対してヤキモチを焼いていると思ったのに、その予想がはずれていて驚いてしまった。
お姉ちゃんからの愛情は全て受け取るけど、さすがに喜多村さんからのその愛情はちょっと重い。