口の悪い、彼は。
 

「価値観が合わないんなら、そういう選択肢が出てくるのは当然の流れだろ」

「っ」


やっぱり千尋は今も私と別れることを考えているのだろうか。


「俺はお前の望む全てを叶えてやることはできねぇからな。お前に自信を持たせるために、自分の気持ちを言うつもりもないし」

「!?」

「それが嫌だと言うんなら、別れるしかねぇだろ」


ま、待って。どういうこと?

今の言葉だと私のことを嫌になったからそういう言葉を出してきたわけじゃなくて、千尋自身が私の望みを叶えられないからそういう言葉を出してきたってことなの?


「……千尋は私のことが嫌になったんじゃないの?」

「はぁ?何言ってんだ、お前は」

「だ、だって!普通そう思っちゃうよ!千尋はワガママで子どもな私に付き合うのが嫌になったんだって!」

「はぁ。一度もそんなこと思ったことねぇよ。どこがどうなってそうなるんだ」

「!!」


千尋から出てきた想像もしていなかった心の声に、私は信じられない気持ちでいっぱいになる。


「今の、ほんとに、ほんと……?」

「嘘ついて何の意味があるんだよ」

「……じゃあ、千尋は私のこと、好きでいてくれてるの?」

「はぁ。ほんとお前は俺のことをわかってねぇな」

「……」


エスパーじゃないのに人の心の中なんて簡単にわかるわけない、と千尋のことを見ると、千尋は私の目の奥をじっと見てきていた。

恥ずかしくなってしまうくらいの目線に目をそらしたくなるけど、今は絶対にそらせない。

だって、千尋が心の中を見せてくれようとしてくれているのだから。

 
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