口の悪い、彼は。
私はぼろぼろと出てくる涙を手の甲でぐいっと拭う。
「~~っ、ち、ちひっ……っ、うぅ~」
「……はぁ。ほんと、仕方ねぇヤツ」
「うっ、ひっ……ひひほ~、うぐっ」
「ったく」
完全に呆れきっている千尋の手が私に伸びてきて、泣きじゃくっていつも以上に不細工になっているはずの私の身体を引き寄せる。
久しぶりの千尋のあたたかさにまた涙が溢れてきてしまって、慌てて顔を手で覆う。
「ち、ひろー」
「……何だ」
「今の、もっかい、言って」
「……一度しか言わねぇっつっただろうが」
「うぅ~、いじわ、んぅ」
千尋は私の手を掴んで顔から外し、ぐずぐずと泣く私の唇を再び塞いでくるけど、泣いている私は息苦しさにもごもごとバタついてしまう。
「んん、は……っ、……千尋っ」
「何」
「好き」
「……知ってる」
「好き~……」
私は甘えるようにして千尋の胸に顔を埋めたくなったけど、涙でスーツを汚してしまうと思って我慢する。
それなのに千尋の手が私の耳をいじりながら頭を抱えるようにしてくるから、私の顔がスーツに埋もれそうになってしまって、私は焦った。