口の悪い、彼は。
近付いてくる寝室に心臓の鼓動が速くなるのを感じながらも、このまま千尋のペースだなんて悔しい、と私は千尋を何とか慌てさせる方法はないものかと頭をフル回転し始める。
……そうだ。
突然私がキスしたら、千尋も少しは慌ててくれる?
「……ね、千尋」
「あ?っ、」
私の呼び掛けに顔を私に向けてきた千尋の唇に、私は腕に力を入れて千尋に近付き、ちゅっと自分の唇を触れさせた。
離れるといつもよりも目を少し大きく開いて驚いた様子の千尋が目に映る。
「……驚いてくれた?」
「……別に」
「ちぇ。ちょっとくらい私のペースに巻き込まれてくれてもいいのに……つまんないの」
むぅ、と唇を尖らせていると、千尋が何やら納得した様子で頷いた。
「……ふぅん。まさか、そんなにヤル気だとはな」
「……ヤル気?」
って、何のお話?
「それなら都合がいい」
「う、ひゃぁっ!」
ぼふん!と私の身体が柔らかいベッドの上に下ろされ、その衝撃で私は目をつぶってしまう。
「もうっ、優しくしてよ!ちひ……っ!?」
目を開けた時に私の目に映ったのは……ばさっとスーツを脱ぎ捨て、ネクタイをシュッと首元から外す千尋の姿。
その動作がセクシーすぎて、私は身動きが取れないくらい釘付けになってしまう。
千尋の目線が私を向き、ベッドの上で呆然としていた私にゆるりと近付いてくる。
「小春」
「っ!」
「妙なことは考えないで、これからも俺だけを見てろ」
「んっ!」
私にはキャパオーバーで受け止められないほどの色気を漂わせながら私を組み敷いてきた千尋は、あっという間に私の全てを奪い去っていった。