口の悪い、彼は。
 

「!!……も、ズルいよ」

「それはお互い様だ。つーか、お前、それが好きなんじゃねぇのか?」

「へっ?」

「冷たくされて喜ぶマゾってやつなんだろ?」

「は!?そんなわけないでしょ!?優しくしてほしいに決まってるから!」

「ふーん。あっそ。優しい男がいいっつーなら、やっぱり別れるしかねぇか。別に俺もSとかじゃねぇけど、俺には“優しく”とかは残念ながらできねぇからな」

「!!またそんなこと言うの!?千尋がそんなこと言ったって、私は絶対に受け入れないから!っていうか、その言葉言うの、やめてよ!」

「期待に添えねぇんだ。“別れる”って選択肢が出てくるのは仕方のないことだろ」

「私は別に千尋に優しさなんて、最初から期待してませーん。」


いーっと歯を見せると、千尋ははぁとため息をついた。


「……意味わかんねぇ。ほんっとお前って珍しい女だよな」

「珍しくて結構!千尋が優しくなくても、私が千尋のことを好きってことは変わらないんだから、それだけでいいの!」


ふん!っと自信満々に鼻を鳴らす。


「……はぁ。来い」

「へっ?ひゃあっ!」


千尋の腕が私の身体を持ち上げ、千尋の胸の上に乗せられてしまう。

乗っているのは上半身だけだとは言え、キャミを着ているだけでいろいろ問題があるし、こんな格好は初めてでめちゃくちゃ恥ずかしい。


「ちょっと千尋っ!これ、やだ!おろして!」

「うるせぇ。お前が悪い」

「何で!って、わ。ちょっ……んっ!」


千尋の大きな手が私の頭を上からぐっと押してきて、その力と重力に逆らえず、バランスを崩してしまった私は上から千尋にキスしてしまう格好になってしまう。

もちろんその状態では、離れようにも千尋の腕の力に勝てるはずはない。

 
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