口の悪い、彼は。
 

「で?結婚する?」

「あ、いえいえ。しませんよー。相手いないですもん」

「あれ、高橋フリーなんだ?じゃあ、俺立候補しよっかな」

「!」


にっこりと笑った喜多村さんが私の頭の上にぽんっと大きな手を乗せてくる。

顔の距離がずいっと近付くけど、私は慌てることはない。

相手がイケメンだからと言って、ひょいひょいと心臓をドキドキ鼓動させる私ではないのだ。

私は片想いだとは言ってもちゃんと好きな人がいるし、それに喜多村さんは……。


「またそんなことを。喜多村さんには相応しい相手がいるでしょう?」

「くくっ。まぁな。最近忙しいって構ってくんねぇんだけど、浮気とかしてねぇよな?」

「よーく知ってるでしょ?浮気なんてできる性格してないってこと」

「まぁね。高橋がそう言うなら間違いねぇし」

「この時期は毎年案件が多いみたいで忙しそうにしてて私も遊んでもらえませんし、安心してください」

「そっか。良かった」


にっと子供みたいな笑顔を浮かべた喜多村さんは、実は私の5歳上のお姉ちゃんの彼氏なんだ。

二人は大学の同期で、学生時代はほとんど話したことがなかったようなんだけど、一昨年にあった同窓会で再会してから、喜多村さんの猛アピールの末、付き合うようになったらしい。

二人が付き合っていることを知った時は世間は狭すぎると思ったものだ。

結婚も秒読みという関係で、何度かふたりと一緒にご飯を食べに行ったことがあるけど、喜多村さんのお姉ちゃん溺愛っぷりは相当なもので、お姉ちゃんも満更ではない感じで、見ているこっちが照れてしまった。

早く結婚すればいいのに、と周りを思わせるくらいに仲のいい恋人同士で、近くでそれを見ている私はふたりのことを憧れる気持ちが人一倍大きいと思う。

 
< 21 / 253 >

この作品をシェア

pagetop