口の悪い、彼は。
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「おい!高橋!お前、何だこれは!」
「っ!!」
私は自分の元へ飛んできたツンツン部長の声にびくっと身体を跳ねさせる。
そして、それはオフィスにいた他の同僚にも伝染する。
そんな同僚から飛んでくるのは憐れみの目線だ。
千尋と私のことは2週間ちょっと前にみんなにはバレてしまったんだけど、平日は私たちは相変わらず会社では仕事以外のことを話すことはないし滅多に近付くこともないから、“そんな関係”に見えない私たちのことを何やかんや言ってくる同僚はいなかった。
騒ぎたいという気持ちがあるとしても、そのことで千尋のツンツンな言葉が飛んでくるかもしれないという怖さがあるせいか、誰も挑戦する人はいないのだ。
……ただ、喜多村さんだけは“すごく気になっている”という視線を飛ばしてくるし、私に話し掛けたそうにしている雰囲気がすごく伝わってくるけど。
ちょうど今週末、喜多村さんとお姉ちゃんの新居にお邪魔する予定だから、その時にでも少し話しておこう。
「おいっ、何してる!?早く来い!」
「あっ、ははははいっ!すみません!」
しまった!つい考え事しちゃってた!
……と慌てても、すでに後の祭り。
「返事は短くていい!!」
「はいっ!!」
さっきのリーダー会議で相当イライラすることがあったらしく、恐ろしく機嫌の悪い千尋はとことん私にそれをぶつけてくる。
こんな日に限ってミスするなんて“最悪”の一言しか浮かんでこないけど、悪いのは誰でもない、ミスをしてしまったらしい私なのだ。