口の悪い、彼は。
*Ex1.ツンツンリーマンの部下。~side喜多村~*
*番外編1*
Time→本編ラストから少し経った頃のお話。
喜多村目線です。
***
俺はつい最近できた妹のことが、かわいくて仕方がない。
○。
俺が大学の同期である高橋知夏(たかはしちか)と再会したのは、大学を卒業してから5年後の同窓会の時のこと。
大学の頃は知夏のことを綺麗なヤツだなと思いながらも特に接点もきっかけもなく、ほとんど話したことはなかったんだけど、同窓会でたまたま知夏と席が隣になってお互いの話をぽつりぽつりとしているうちに、好きな建築家や建造物が全く同じことに気付き、ふたりで夢中になって話していた。
知夏は一言で言えばクールなヤツで、感情を表に出すことはあまりないし、自分から積極的に人に話し掛けるタイプでもない。
でも実際に話してみると、知夏の言葉の端々には好きなものに対する情熱やかわいさが見え隠れしていて、それに気付いた俺は、同窓会が終わる頃にはすっかり知夏のことが気になる存在になっていた。
……でも、こんなことは初めてなんだけど、同窓会が終わる時間になっても知夏の連絡先を聞き出す勇気が出なくて、結局何の繋がりも残すことはできずにそのまま別れてしまった。
どちらかというと、気になる女ができれば積極的に動くタイプの俺が、だ。
帰り道、早速後悔に襲われてしまったけど、話が盛り上がったことで一時的に熱が上がってしまっただけだ、そのうちこんな気持ちは忘れる、と自分に言い聞かせた俺は、特に何もせずに日々を過ごしていった。
同窓会から約2週間が経ったある日、同窓会で久しぶりに再会した友達からメールが届いた。
そこに書かれてあったのは、同窓会が楽しかったという内容と、同窓会で会ったみんなの印象について。
その中には知夏の話もあった。
他意はなかったとは思うけど、知夏が綺麗になっていて狙う男もたくさんいるだろうな、なんて文章も書かれていて、俺は焦りを感じた。
俺だけじゃない。他の男も知夏のことを気にしていたんだと。
……つまり、時間が経っても、知夏のことを忘れることなんてできていなかったんだ。
それからは友達の彼女が知夏と仲がいいことを思い出し、反則だと思いながらも知夏の連絡先を何とか聞き出し、知夏と連絡を取るようになった。
……加速していく知夏への想い。
話せば話すほど、会えば会うほど、知夏のことが欲しくなる俺がいた。