口の悪い、彼は。
 



夕食を食べ終わって片付けまで終えた俺と知夏は、ソファーに座ってまったりとしていた。

とは言っても、俺の頭の中は“ある出来事”のことでいっぱいだった。


「なぁ、知夏」

「何?」

「俺はどう受け止めればいいんだ?」

「……何かあったの?」

「覚えてる?結婚式の時に来てた真野部長」

「……うん」

「……あーっ!やっぱり信じらんねぇ!」

「……」


突然叫んだ俺に対して、隣に座っている知夏が大きな反応を起こすことはない。

でもきっと……うん、やっぱり。

知夏の方に目を向けると、知夏は驚いているようだった。

ほんの少しだけど、いつもよりも目を大きく見開いているから。


「高橋がさ、真野部長と付き合ってるみたいなんだ」

「……そう」

「え、驚かねぇの?もしかして聞いてた?」

「聞いたっていうか、気付いたから」

「……マジで!?いつ!?何で!?何で俺に教えてくんねぇの!」

「私の口から勝手に話すのは良くないと思ったし、小春もそう望んでいたから。気付いたのは結婚式の時にふたりでいた時の雰囲気で、ね。小春も安心したような表情していたし、真野さんも優しい目をして小春のこと見てたもの。結婚式が終わった後、小春に確かめたらその通りだった」

「……マジ?俺、ぜんっぜん気付かなかったんだけど!」


知夏が部長に会ったのはあの一回きりのはずだ。

それに対して俺は何年もふたりと一緒に働いてきているというのに。

部長が高橋のことを「小春」と呼ぶ瞬間まで、1ミリたりとも気付かなかった。

 
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