口の悪い、彼は。
不安な気持ちを抱えたまま部長のことを見ると、部長ははぁとため息をついた。
「本当にお前と高橋は似てるな。考えてることがすぐ顔に出る」
「!すみません。別に、変な意味ではなくて……」
「いい。喜多村が高橋のことを可愛がっているのはよくわかってる」
「……はい。大事な義妹なので……やっぱり気になって」
いくら信頼している上司だとは言え、高橋の相手となれば心配にもなってしまう。
何となく気まずくて目線を落とすと、部長から「喜多村」と呼び掛けられ、俺は目線を上げた。
目に映るのは俺を真っ直ぐ見てくる部長の瞳だった。
「遊びでも何でもねぇから安心しろ」
「!」
「ちゃんと先のことも考えてる」
「……それって」
結婚を考えてる、ってことか?
……高橋との未来を……?
「小春には言うなよ。うるせぇからな」
「……!」
今まで“高橋”呼びだったのに“小春”呼びになった部長に驚いてしまっていると、部長の目線がふと部屋の中で笑顔を浮かべている高橋に移った。
その瞳は決して優しいものとは言えないけど、嘘をついているようなものではなく、ただ真っ直ぐと高橋のことを見つめている。
部長の本気さを感じた気がした。