口の悪い、彼は。
 

不安な気持ちを抱えたまま部長のことを見ると、部長ははぁとため息をついた。


「本当にお前と高橋は似てるな。考えてることがすぐ顔に出る」

「!すみません。別に、変な意味ではなくて……」

「いい。喜多村が高橋のことを可愛がっているのはよくわかってる」

「……はい。大事な義妹なので……やっぱり気になって」


いくら信頼している上司だとは言え、高橋の相手となれば心配にもなってしまう。

何となく気まずくて目線を落とすと、部長から「喜多村」と呼び掛けられ、俺は目線を上げた。

目に映るのは俺を真っ直ぐ見てくる部長の瞳だった。


「遊びでも何でもねぇから安心しろ」

「!」

「ちゃんと先のことも考えてる」

「……それって」


結婚を考えてる、ってことか?

……高橋との未来を……?


「小春には言うなよ。うるせぇからな」

「……!」


今まで“高橋”呼びだったのに“小春”呼びになった部長に驚いてしまっていると、部長の目線がふと部屋の中で笑顔を浮かべている高橋に移った。

その瞳は決して優しいものとは言えないけど、嘘をついているようなものではなく、ただ真っ直ぐと高橋のことを見つめている。

部長の本気さを感じた気がした。

 
< 225 / 253 >

この作品をシェア

pagetop