口の悪い、彼は。
知夏の身体を引き寄せて、俺はぎゅうっと抱き締める。
「……俊くんって時々、突然突っ走っちゃうよね」
「!あっ、わり」
知夏のやんわりとした言葉にはっと我に返り、知夏の身体をそっと離すと、そこには笑みはないとは言え、いつも以上にかわいい表情を浮かべた知夏がいた。
え、呆れたんじゃねぇのか?
「……でも、そういうところ、…………好き、だから。わかっててね」
「っ!?」
驚いた。……いや、驚いたなんて言葉では片付けられない。
耳に入ってきた知夏の言葉を初めとして……目に映るのは、目を閉じている知夏のアップ。
手に感じるのは、俺の手にそっと触れている知夏の手の感触とぬくもり。
そして、唇にふわりと触れているのは、やわらかくてあたたかい知夏の唇。
こんなことははじめてで、一気に感動の気持ちが湧いてきてしまう。
ヤバい。嬉しい。ヤバい。ヤバい。
……知夏からキスしてくるとか!!
俺は目を閉じてその心地いい唇をもっと感じたいと距離を縮めようとしたけど、それは叶わず、知夏は俺の胸をそっと押して離れてしまった。
目を開けると、そこには近距離なのに真っ直ぐ見てくる知夏の顔がある。
「……私は俊くん以外の人なんて、嫌だから。俊くんだけが好きなの」
「知夏」
「……あっ、ごめんね、突然」
俺の呼び掛けにハッと我に返った知夏が恥ずかしそうに俺から離れようとするけど、俺はそれを制する。
こんな幸せすぎる状況なのに離れられるわけない。