口の悪い、彼は。
 
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高橋と部長が喜多村家を訪れた翌々日の、週が明けた月曜日のこと。

いつも通りの平日の生活にすっかり戻っていた。

後30分もすれば今日の仕事は終わりだけど、まだオフィスには営業の人間は外回りから戻ってきていなくて、俺と高橋と部長の3人しかいない。


「高橋。ちょっと来い」

「あ、はーい」

「返事は短くていいって何度言えばわかるんだ」

「!……はい」


さっきまで俺と話していた余韻が残っていたのか、高橋が部長の呼び掛けに対してゆるりと返事をすると、部長はいつものようにツンツンとした言葉を投げてきた。

高橋は『しまった!』という表情を浮かべた後返事をしなおし、部長の元へ向かう。

俺は企画の資料をまとめつつ、そんなふたりの様子をぼんやりと眺める。

部長は高橋に何か資料を渡し、一言二言告げる。

その様子はこの前家で見たものとはやっぱり雰囲気が違う気がした。

家に来た時は高橋と部長が話しているところは結局あまり見れなかったけど、実際のところ、ふたりでいる時はどんな感じなんだろう。

妹のことだから気になるというところもあるけど……正直、男としてどんな感じなのか気になるっつーか……。

想像することすら難しい、アレとかソレとか……。

どう頑張ってもふたりにしか知りようのない疑問を持ちつつパソコンに向かい始めようとした時、突然、部長の声が耳に飛び込んできた。


「おい、喜多村!」

「……はいっ!」

「何をボーっとしてる!?」

「!!いえっ!何でも!!」

「何度も呼ばせるな!さっさとこっちに来い!」

「はいっ!」


やべぇ!仕事中だというのに余計なことを考えてた!

しかも、部長の呼び掛けに気付かないとか、何という失態!

 
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