口の悪い、彼は。
 

俺はさっと資料を保存してから慌てて手帳を持って部長のデスクに向かい、部長に頭を下げる。


「すみません!」

「仕事に集中しろよ!」

「はいっ!」


ぎろりと部長に睨まれ、俺はピシッと背筋を伸ばした。

……けど。

……つーか……そうか。

よく考えなくても……もし高橋と部長が結婚するなんてことになったら……。


「……。」


義理とは言え、部長が俺の弟になるってことか!?

この部長に『お兄さん』とか呼ばれ……うわぁぁぁ!

そんな心構え、一生できねぇっつの!!


「喜多村?聞いてんのか?」

「……」

「おい!喜多村!」

「!!は、はいっ!?」

「頭冷やしてこい!」

「へっ?」

「そんなぼんやりして仕事されるのは迷惑っつってんだよ!」

「!!すっ、すみません!!」

「早くここから去れ!」

「はいっ!」


俺は部長に怒鳴られ促されるまま、オフィスを出た。

……ダメだダメだ!

ちゃんと気持ちを切り替えないと、仕事にならない。

よし。平日はふたりのことは考えない!それがいい!

俺は頭を冷やすために屋上に向かいながら、自分の頬をパンッと叩いた。

 
< 231 / 253 >

この作品をシェア

pagetop