口の悪い、彼は。
*Ex2.ツンツンリーマンの未来。~side小春~*
*番外編2*
Time→番外編1から1年半後くらいのお話。
小春目線です。
***
私は朝からウキウキしていた。
何故なら、今日は……。
「何で!?千尋も行こうよー!まだ一回も行ってないじゃん!」
「おい。引っ張るな。いい加減、ウザい」
「千尋は会いたくないの!?」
「別に」
「何で!?お姉ちゃんと喜多村さんの赤ちゃん、めちゃくちゃかわいいのに!」
私は携帯の待受画面をバン!と千尋に向ける。
でも、千尋はいつものようにさらりと流し見をするだけだ。
今、私の携帯の待受画面には半年前に生まれたお姉ちゃんと喜多村さんの子ども、晴日(はるひ)ちゃんの写真が設定されている。
女の子で目がくりくりとまるくて大きくて、それはもうかわいくてかわいくて仕方がない。
友達が「自分の子どもは目に入れても痛くないくらいかわいい!」なんて言っていたけど、姪っ子だって目に入れても痛くないくらいかわいいことを私は半年前に知った。
晴日ちゃんが生まれてすぐの頃に「将来は“お姉ちゃん”って呼ばせるんだ~」と言っていたら、千尋に「立派なおばさんだろうが」と鼻で笑われてしまった。
もちろんその千尋の言葉に対して、私がぷんすかと怒ったことは言うまでもない。
今日はそんな喜多村家に約2ヶ月ぶりに訪問することになっていて、予定が決まった日から私はずっとウキウキしっぱなしだった。
そして、一度も晴日ちゃんに逢いに行っていない千尋を、「一緒に行こう!」と誘っているのだ。
予想していた通り、千尋は「行かない」という一点張りで全く頷いてくれる気配はないけど。
私はソファで隣に座って雑誌に目を落としている千尋の服を、諦めずツンツンと引っ張る。