口の悪い、彼は。
須々木くんにいつものようにサンプル品の企画書や仕様などの資料をメールで送ってもらうようにお願いした後、私はほくほくしながらダンボールを胸に抱えて営業部のオフィスに戻っていた。
エレベーターホールがある廊下から、喫煙ルームのある廊下に足を踏み入れた時、突然視界が暗くなり、どんっという衝撃が私の左肩を襲った。
「わっ!?」
「ひゃっ!?」
ぐらりと揺れる視界に、腕に乗せているだけの状態だったダンボールを腕で包み込むように、私は咄嗟に抱き締める。
何よりも今はこのサンプル品を床に落とすわけにはいかないと、反射的に思ったのだ。
ほんの1秒の間だったはずなのにスローモーションに世界が動いているように感じて、はっと我に返った時には、どさっと音を立てて、私のお尻は廊下の上に乗っかっていた。
もちろんそれと同時に私を襲ったのはお尻への衝撃だったけど、それよりも自分の腕に抱えているダンボールが気になってしまった私は、はっと目線を下げた。
目に映るそれは特につぶれた様子もなく、地面に叩きつけられることもなく、私の腕の中にしっかりと収まっていた。
特に問題もなさそうだ。
「はぁ~良かった……」
「高橋さん!すみません!大丈夫ですか!?」
「へ?」
上から降ってきた声に顔を上げると、そこには営業一課の2年目の井上(いのうえ)くんがいた。