口の悪い、彼は。
「あ、あのっ、部長」
「あ?」
「ダンボールは落としてはないんですけど……さっきこけてしまって、胸に抱えて守ったつもりだったんですけど、もしかしたらその時に……っ」
「は?」
「す、すみません……!私のせいです……!すみません!!」
私はガバッと深く頭を下げる。
最悪だ。大事な新製品のサンプルを壊してしまうなんて。
ドクンドクンと嫌な音をたてる心臓が苦しくて、目頭が熱くなっていく。
でも、泣いても壊れたものが元に戻るわけじゃない、と私はぐっと涙が零れそうになるのをこらえる。
どうしよう。
どうしたらいいんだろう。
「高橋」
「はっ、はいっ!」
「本当に落としてねぇんだな?」
「は、はい……。でも、こけた時の衝撃が伝わって壊れたのかもしれません、ので」
「……わかった。もういい」
「え、でも、部長」
「もういいっつってんだ。お前は自分の仕事に戻れ」
「!……はい」
見放されたと思った。
その証拠に部長は怒りもせず、ただ呆れた様子で私から目線をそらしてしまったから。
胸元を込み上げてくる苦しいものが私を襲ったけど、私はそれ以上、何も言うことも考えることもできなかった。