口の悪い、彼は。
「部長、笑ってたんだって」
「……はいっ!?」
あの部長が笑ってたぁ!?
「な?驚くだろ?俺も10年近く部長の下で働いてるけど、部長の笑顔とか初めて見たし!」
「ほ、本当に笑ってたんですか?あの部長、ですよ?」
「マジマジ。いやーあの笑顔は男の俺でさえ、ドキッとしたね!」
「……ず、ズルイ……っ」
「だろだろ~?やっぱり超貴重だもんなぁ~」
喜多村さんは「超貴重」だからと得意げに笑うけど、そういう話ではないのだ。
私は貴重だから見たいわけじゃなくて、部長のことが好きだからその笑顔を見たいんだから!
ずるい、ずるい~!
つい、じとっと羨みの目で喜多村さんを見てしまう。
「それにさ。もっと驚くんだけど」
「え、まだ何かあるんですかっ!?」
「部長が一緒にいた相手、誰だと思う?」
「!だ、誰ですか?」
嫌な予感がして、心臓がどくんどくんと振動し始める。
もしかして、相手って……女の人、なんじゃ……。
だから喜多村さんは愉しげな様子なのかもしれない。
この嫌な予感が当たりませんように、と私は心から願いながら喜多村さんの答えを待つ。
喜多村さんはにやりと笑ってその口を開いた。