口の悪い、彼は。
「女、だぜ?壮絶美人の女!」
「!!」
「またさぁ、あの部長と超お似合いでさぁ~。超仲良さそうに笑顔で話してて親密な雰囲気がバリバリだったし、ぜってぇ恋人とかそういうのだって!」
「……っ」
ずきん!と胸に痛みが走って、つい手で胸を押さえてしまう。
何でこういう当たって欲しくない予感は簡単に当たってしまうんだろう。
当たって欲しい予感は全く当たってくれないのに。
……やっぱり、部長にはそういう相手がいるんだ。
そりゃそうだよね。
口は悪いかもしれないけど、あんなに魅力的な人なんだもん。
部長の中身をわかってくれる大人の女の人なんて、世の中にはたくさんいるのだ。
……でも。
ほんの少しの望みから浮かんだ疑問を、喜多村さんに投げかける。
「喜多村さん」
「ん?」
「それ、ただの取引相手、とかの可能性は……ほら、営業スマイル的な」
「ねぇな。」
「!断言できちゃうんですかっ?」
「できるって。だって、笑顔だけじゃなくて、腕までがっつり組んでたんだぜ?百歩譲って取引相手だとしても、それ以上の関係もそこにはぜってぇあるだろ」
「……」
頭をがーんと殴られたような衝撃で、私はそれ以上何も言うことができなくなってしまった。
あの誰にも触れさせないようなオーラの漂っている部長が、女の人と腕を組んでいて。
しかもその表情には笑みが浮かんでいて。
……そんなの、決定打過ぎて、部長への想いは諦めろと言われているようなものだと思った。
バカみたいに1%あるかどうかもわからない可能性に期待して、部長のことを見ていた私は本当に身の程知らずで……何かもう、笑いしか出てこない。
部長の恋愛事情をこんな形で知ってしまった私は、膨らみまくっているこの気持ちをこれからどうしていけばいいんだろう。