口の悪い、彼は。
 

呆然とふたりのことを見ていると、社長が諦めたようにはぁとため息をつき、表情をにっこりとした笑顔に一転させて私の方に向かって歩き始める。

その社長の行動に、私はつい身体をびくりと強張らせてしまった。

なななな何!?

何でこっちに来るの!?

もしかして私、社長に何か失礼なことでもしちゃった!?


「高橋さん」

「はっ、はいっ!!」

「真野は優しくしてくれる?」

「……はい!?」

「こいつ、優しくしてくれないでしょー?僕に乗り換えちゃわない?」

「!?」


にっこりと微笑んだ社長がふわりとしたいい香りと共に私の顔にずいっと近寄ってきて、私はがたっとオフィスチェアを後ろに蹴飛ばしてしまいながら、一歩下がってしまう。

の、乗り換えるって……まさか社長、私が部長のことを好きなことを知って……!?

何で!?

私の名前も知らなかったはずの社長が、私が部長を好きなことを知っているという事実に対して、私は驚きを隠しきれない。

まさか、社長も部長と同じで人の心を読めるエスパーなの!?


「ね?そうしちゃおうよー。僕、たっぷり優しくしてあげるよ?」

「!!」


ずいっと再度社長の綺麗な顔が近寄ってきて、慌ててしまった私は後ろに一歩下がってしまうけど、私はオフィスチェアの足に自分の足を乗せてしまい、ぐらりとバランスを崩してしまった。


「きゃあ!?」

「わっ!」


咄嗟にデスクを掴もうとしたけど届く位置ではなく、私の身体はそのまま傾いていく。

さ、最悪だぁ!!!

こんなことでこけるなんて!!!

私は目をぎゅっとつぶり、こけることを覚悟した。

 
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