口の悪い、彼は。
 

本気でそんなことを思ったのに、社長の口からは意外な言葉が出てくる。


「えー、もう離れちゃうの?高橋さん、超ふにふにで気持ち良かったのにー。ツマンナイなぁ~」

「!?」

「あっ、っていうか、そうだよねぇ。真野の前だもんねぇ」

「黒崎、マジで出て行け。今すぐだ」

「真野も怒るなって。今のは事故だよ、事故っ!って、おいー。首根っこ掴むなよ~」

「お前が出て行かないのが悪い。帰れ」


社長は部長に首根っこを掴まれ、まるで猫がそうされるように、ずるずるとオフィスの扉の方に運ばれていく。

私はわけのわからない状態でぼんやりとその光景を目に映していた。

「また来るからねぇ~」という社長の言葉と共に、ばたん!と扉の閉まる音がして、私はようやくはっと我に返る。

部長と社長は一緒に外に出て行ってしまったらしく、オフィス内に残っているのは私だけだった。

……なっ、何なの!?今のっ!!

っていうか、社長、超いい香りだったんですけど!超アロマ!

……って、違う違う!!

今の問題は、何で社長に私の気持ちがバレてるのかってことだ!

誰にも言ったことのない想い。

誰にもばれないようにとひっそりと持っていた想い。

それが簡単に見破られた……?


「ま、まさか……、実はみんなにバレバレだってこと?……うそぉ!!」


私は頬に両手を当てて、ムンクの叫びポーズをする。

 
< 66 / 253 >

この作品をシェア

pagetop