口の悪い、彼は。
……ねぇ、わかってるよね?
どんなに部長のことが好きでも、部長の瞳に私が映り込むことはないんだよ?
遠くからひっそりと見つめることしかできないんだよ?
相手なんかしてもらえるわけ、ないんだよ?
そんな切なくなるだけの自問をしてしまった時、ふと部長の目線が私を向いた。
「!」
「何だよ。そんなに見られたら気持ち悪い。言いたいことがあるならさっさと言え」
「!!す、すみません!何でもないです!もう見ません!」
私は慌てて、眉間に深い皺を寄せて嫌そうな表情を浮かべた部長から目線をそらす。
こんな近い距離で見つめていれば気付かれるのが早いのは当たり前だ。
そんな簡単なこともわからないなんて、やっぱり私はバカだなと思うのと同時に、部長のことを見つめることすら許されないんだと気付くと、今度こそ本当に涙が出てしまいそうになってしまった。
……部長のことはすっぱり諦めなきゃいけないんだ。
こんな不毛すぎる恋はやめて、他に好きな人を見つけた方が絶対にいいに決まってる。
諦める理由ならもうすでにちゃんとあるんだから。
太ももに乗せた手で、私は手のひらに爪が食い込むくらい、ぐっと拳を握った。
「……部長には好きな人がいるんだから」
「あぁ?」
「……、あっ!?」
私は部長の声ではっと口を手で押さえて、部長の方に目線を向ける。
そこには明らかに怪訝な表情をした部長がいた。
嘘……!
まさか、今の口に出ちゃってた!?