口の悪い、彼は。
部長は呆れ返った様子で私の後頭部に大きな手を当てて引き寄せ、そのまま私の唇を塞いできた。
もちろん、私はその状況を理解することなんてできない。
ななな何が起こってるの!?
何も簡単じゃないんですけど……!
たったひとつだけわかることは、いつもツンツンした言葉を発しているとは思えないほど、触れている唇があたたかくて柔らかいということ。
私の思考を一気に奪っていくほどの気持ちよさを、その唇は滑らかに与えてくる。
焦点が合わないくらい近くにある部長の顔を私は呆然と見ていたけど、ふと唇が離れ、薄目を開けた部長と目が合った。
「……おい。ガキじゃあるまいし、目くらい閉じろよ。……もしかして初めてか?」
「っ!?い、いや、そういうわけじゃないですけど……!でも……っ、部長、意味がわからな」
「今教えてやるから黙ってろ」
「んっ!」
部長がぶつかるように唇に触れてきて、私はその衝撃で目を閉じてしまう。
待って……どういうことなの?
何で私、部長とキスしてるの?
こんなことされたら、期待しちゃうよ……。
強引さを忘れさせるように少しずつ私を引きずりこんでいくキスに、私はあっという間に酔いしれてしまって。
何も考えられなくて、ただもっとそのぬくもりが欲しいと思ってしまっていた。
……求めてしまうことしか、私の中に選択肢がなくなる。
こんなに甘いキスをされて期待しない方がおかしい。
部長も……私のことを好きだと思ってくれているの?
自惚れてもいいの?
でも……大切にしてる彼女がいるんだよね?
部長の彼女の存在に対して罪悪感を感じながらも部長のスーツの胸元をきゅっと握ると、それに応えてくれるように、部長のキスが深くなっていく。
……好き。